障害者就労支援士(仮称)とは?資格の内容と今後の未来を解説

2025年2月27日厚生労働省の「職場適応援助者の育成・確保に関する作業部会」(主査=小川浩大妻女子大副学長)が開かれ、障害者就労支援人材の新資格「障害者就労支援士」(仮称)の創設を柱とする報告書を取りまとめた。(出典:福祉新聞『障害者就労支援で中級レベルの資格創設 厚労省、スキルアップの明確化』)

障害者就労支援に関する資格は「ジョブコーチ養成研修」がありましたが、資格取得数などはあまり伸びていませんでした。しかし2025年度から「基礎的研修」と、「ジョブコーチ養成上級研修」が始まる予定で、それに加えて早ければ2027年度から「障害者就労支援士」が始まると見込まれています。

本記事では、障害者就労支援士(仮称)の概要に加え、今後障害支援施設がどのような対応が求められるかを解説しています。今後の動向が気になる障害支援施設の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

障害者就労支援士(仮称)の資格ができた背景

厚生労働省は『障害者就労支援士検定(仮称)モデル試験』という資料を公表し、障害者就労支援士(仮称)がどのような資格であるのか、この資格ができた背景について解説しています。まずは障害者就労支援士(仮称)が、どのような背景で誕生したのかを解説していきます。

障害者を企業で働ける人材にしたい

厚生労働省の資料でキーワードになっているのが『雇用施策と福祉施策の一体的展開の推進』という言葉です。本資格の内容とこのキーワードから読み取れることとしては、障害者の雇用と障害者の福祉を一緒に推進すること、つまり障害者を企業で働ける人材にすることを目的としています。

従来までの障害支援施設は、施設内で簡単な作業をさせることに専念させていた施設が多くありました。しかし近年企業の人材不足、多様な人材の雇用などの観点から、障害者の就労を支援する施設が増えてきています。国としてはこのように障害者の就労を支援する施設をバックアップするため、施設の従業員に障害者就労の知識を身につけてほしいという思惑から、障害者就労支援士(仮称)という資格ができたと予想されます。

障害支援施設で働く従業員の待遇改善

障害者就労支援士(仮称)の設立にあたり、障害支援施設で働く人は、基礎研修・ジョブコーチ養成研修・障害者就労支援士(仮称)・ジョブコーチ上級養成研修という流れで資格を取得することになります。これにより障害支援施設で働く人の専門性を高め、待遇改善を狙っていることも予測されます。

出典:厚生労働省『障害者就労支援士検定(仮称)モデル試験

これまで障害支援施設で働く人は、キャリアアップの道筋が不明確で、低賃金のまま働いている人が少なくありませんでした。しかし資格のキャリアパスが明確になることで、専門性が高まり、待遇改善につながると思われます。

障害者就労支援士(仮称)の概要

続いては障害者就労支援士(仮称)の対象者、試験科目など現時点で公表されている情報を紹介していきます。

障害者就労支援士(仮称)の対象者

障害者就労支援士(仮称)の資格を取得するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 障害者就労支援の実務経験が3年以上
  2. ジョブコーチ養成研修を修了し、障害者就労支援に従事している

障害者就労に関わる機関としては、主に以下のような機関が想定されています。

  • 障害者就業・生活支援センター
  • 就労継続支援事業所(A型・B型)
  • 就労移行支援事業所
  • 就労定着支援事業所
  • 就労選択支援事業所など

障害者就労支援士(仮称)は早ければ2027年度後半から検定が始まる見込みです。現状障害支援施設で働いている人は、資格が始まる頃には①の条件を満たす人がほとんどです。ただし今後新しく障害支援施設で働く人に対しても、障害者就労支援士(仮称)の資格取得を目指してもらう必要が出てきます。それに備えて、ジョブコーチ養成研修を受講できる体制を整えておきましょう。

障害者就労支援士(仮称)の試験科目

障害者就労支援士(仮称)の試験では、以下の10科目の学科試験が想定されています。

  1. 就労支援の理念・目的、障害者雇用の現状と障害者雇用・福祉施策
  2. 就労支援のプロセス(インテーク~職業準備性の向上のための支援)
  3. 就労支援のプロセス(求職活動支援~定着支援)
  4. 就労支援機関の役割と連携
  5. 障害特性と職業的課題
  6. 労働関係法規の基礎知識
  7. 企業に対する支援の基礎
  8. ケースマネジメントと職場定着のための生活支援・家族支援
  9. アセスメントの基礎
  10. 企業における障害者雇用の実際

出典:厚生労働省『障害者就労支援士検定(仮称)モデル試験科目及びその範囲並びにその細目(案)

いずれも障害者の就労に関する知識を問うものです。より詳細な試験内容については『障害者就労支援士検定(仮称)モデル試験科目及びその範囲並びにその細目(案)』に記載されていますので、そちらをご参照ください。

障害者就労支援士(仮称)の資格ができた後想像される未来

ここまで障害者就労支援士(仮称)ができた背景と、資格の概要について解説してきました。これまでの内容を踏まえて、今後想像される未来と、就労支援施設がどう対応していくべきかを解説していきます。

資格取得者がいる施設の報酬優遇

基礎研修・ジョブコーチ養成研修・障害者就労支援士(仮称)・ジョブコーチ上級養成研修という資格取得の流れが確立します。これにより障害者支援施設で働く人には、資格取得が推奨されていくでしょう。そして近い将来、資格取得者がいる施設の報酬が高くなると想定されます。

令和6年就労継続支援B型の報酬改定を解説|今後求められる事業所運営とは」の記事でも解説しましたが、国は施設利用者の労働環境が整っている施設の報酬を上げています。障害者の就労と福祉の両立を目指すということは、資格取得者がいる施設の報酬を上げることは自然な流れだと想定しています。

施設利用者の就労支援を進める

そして障害者支援施設の利用者もずっと施設で働くのではなく、就労支援を進める流れになると想定しています。就労支援を進める施設にも報酬が優遇される流れも、近い未来で実現するでしょう。施設としてはその流れを予測して、施設利用者への就労支援を進めておくことをおすすめします。

従業員への資格取得促進

資格取得者がいる施設の報酬が優遇されるとすると、施設としては従業員に資格取得を促進する必要があります。施設に就職した後段階を踏んで、基礎研修・ジョブコーチ養成研修・障害者就労支援士(仮称)・ジョブコーチ上級養成研修の資格を取得する流れを作っていきましょう。

障害者就労支援士(仮称)の今後に注目

ここまで障害者就労支援士(仮称)の概要と、今後の流れについて解説してきました。障害者就労支援士(仮称)についてはまだ確定ではありませんが、近い未来にもっと多くの情報が出てくることが予測されます。本ブログでも新しい情報が出次第更新していきますので、ぜひチェックしておいてください。

就労継続支援事業所(A型・B型)・就労移行支援事業所の資金繰り改善に役立つ!

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