就労継続支援A型事業所の開業資金はいくら必要?

就労継続支援A型事業所の立ち上げを考えたとき、開業にかかる費用について気になると思います。

就労継続支援A型事業所の開業には、初期費用(イニシャルコスト)300万円~800万円前後、運転資金(ランニングコスト)月額200万円前後が必要と言われています。

どんなものにどのくらいの費用がかかるのかを、これから詳しく解説していきます。

就労継続支援A型事業所の立ち上げをお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

就労継続支援A型の開業にかかる費用

就労継続支援A型事業所を立ち上げ運営していくためには、初期費用(イニシャルコスト)と運転資金(ランニングコスト)の2つの費用が発生します。

まずは、初期費用(イニシャルコスト)の内訳をみていきましょう。

初期費用(イニシャルコスト)

初期費用には以下のようなものがあります。

  • 法人設立費
  • 物件取得費
  • 消防設備費
  • 事務用品費
  • 光熱費
  • 利用者の仕事道具に関する費用
  • 送迎車に関する費用

法人設立費

 障害福祉サービスを始めるには法人を設立する必要があり、設立には費用がかかります。

 以下のように法人の種類によってかかる費用は異なります。

株式会社25万円程度
合同会社10万円程度
NPO法人(特定非営利活動法人)数万円程度
一般社団法人10万円程度

物件取得費

 賃貸物件を取得するための費用です。

借りる場所や物件によって異なりますが、敷金・礼金・保証金を合わせて60万円程度を想定すると良いでしょう。

自治体によって、物件の要件に「約3㎡/人が必要」と「特に面積要件なし」がありますが、50㎡から100㎡未満が望ましいでしょう。

消防設備費

 誘導灯と消火器の設置ならば15万円程度ですが、消防から自火報の設置を求められた場合は100万円以上必要です。

事務用品費

 事務用品として、事務机・テーブル・パソコン・プリンター等の用意が必要です。必要数にもよりますが、30万~60万を考えておくと良いでしょう。

光熱費

 インターネット開設工事と電話工事合わせて3万円程度が必要です。

・利用者の仕事道具に関する費用

 作業内容により大きく異なります。

事務作業をするならば、パソコンやデスク・椅子が必要になります。製作が主な作業内容であれば、工具代が必要です。

送迎車に関する費用

送迎サービスを行う場合、送迎車の用意が必要です。導入する車(新車や中古、福祉車両等)によって大きく異なりますが、50万~500万程度を考えておきましょう。

株式会社を設立し、利用者用仕事道具を100万円、車両1台100万円と仮定した場合、初期費用をまとめると330万円程度になります。

次に、運転資金(ランニングコスト)の内訳をみていきましょう。

運転資金(ランニングコスト)

ランニングコストとは、事業開始後に継続的にかかる費用のことです。

ランニングコストには以下のようなものがあります。

  • 家賃
  • 人件費
  • 利用者人件費
  • 光熱費
  • 営業費・雑費

モデルケース:平日営業、定員10名(時給900円)、管理者兼サビ管1名・職業指導員1名・生活支援員1名(常勤3名)で1か月のコストを算出すると以下のようになります。

科目費用
家賃15万円
人件費70万円 ※3名分
利用者人件費79万2000円 ※時給900円×4時間稼働×22日×10名
光熱費3万円
営業・雑費30万円
合計197万2000円

実際は初月から利用者数が定員に達することは難しいため、人数が徐々に増えていくことを想定しシミュレーションすると良いでしょう。

また、サービス提供をしてから報酬を得るまでには2か月近くかかることを見込んで、ランニングコストは余裕を持って3か月分を用意しておくことをお勧めします。上記シミュレーションでは約600万円になります。

就労継続支援A型事業所の立ち上げを考えた場合、初期費用(イニシャルコスト)と運転資金(ランニングコスト)3か月分を合わせると930万円程度の準備が必要です。

ここまででお分かりのように、就労継続支援A型事業所の立ち上げには多額の資金が必要になります。

次に、以下で就労継続支援A型事業所開業に使える資金調達方法をご紹介します。

就労継続支援A型の資金調達方法

 就労継続支援A型事業所を開設・運営していくにあたって必要な資金の調達方法には以下のようなものがあります。

銀行や信用金庫からの借入 

銀行や信用金庫に融資を申し込む方法です。

大手銀行の場合、支店が多く便利ではありますが立ち上げ直後では利用が難しい場合があります。

信用金庫のような地域密着の金融機関の場合は、大手銀行より借入のハードルは低いですが、支店数が少ないことが難点です。

政策金融機関の融資制度

政策金融機関の中で、日本政策金融公庫では以下のような制度があります。

日本政策金融公庫は立ち上げたばかりの新規事業者にとって融資が受けられやすい制度が整っています。

新創業融資制度

新たに事業を始めるため、または事業を開始して間もない方が無担保・無保証人で利用できる融資です。

上限3,000万円(うち運転資金1,500万円)の借り入れが可能です。

その他詳細は下記をご参照ください。

参考:日本政策金融公庫「新創業融資制度」

ソーシャルビジネス支援資金

社会的課題の解決を目的とする事業が受けられる融資で、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)の借入が可能です。

その他詳細は下記をご参照ください

参考:日本政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」

ファクタリングサービス

ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、手数料を差し引いた金額を早急に受け取ることができるサービスです。

通常、サービス提供から報酬の入金までに2か月近くかかりますが、ファクタリングを利用することで早急に現金化することが可能です。

事業を立ち上げたばかりの頃は資金不足になる事業所も多いため、経営が安定するまでファクタリングサービスを利用するのも1つの手です。

就労継続支援A型の立ち上げに役立つ助成金・補助金

就労継続支援A型事業所を開業するには多くの資金が必要になり、立ち上げ時に活用できる助成金や補助金があれば積極的に使っていきたいところです。

就労継続支援A型の開業に役立つ助成金・補助金としては、以下のようなものがあります。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する場合、経費の一部をサポートしてくれる制度になります。

就労継続支援A型のような障害福祉事業では、国保連への請求に使う請求ソフトや、勤怠管理システム、会計ソフトなどのITツールの導入で補助金を活用することができます。

また、PC・タブレット・プリンター・スキャナーといったハードウェアの購入費用も2022年からIT導入補助金の対象となっており、補助率1/2以内、補助上限額10万円の範囲内で補助金がもらえます。

こういった、ITツール・ソフト・ハードウェアは就労継続支援A型の運営には必須となるものなので、上手く補助金を活用するのがいいでしょう。

注意点としては、補助金の対象となるのは、IT導入支援事業者に登録されている企業が提供するITツール・ソフトのみであるため、どのITツール・ソフトが対象となるのかは事前に把握する必要があります。

IT導入補助金について詳しくは以下をご参照ください。

参照:IT導入補助金

まとめ

ここまで就労継続支援A型事業所の開業にかかる費用と、資金調達方法を解説してきました。

就労継続支援A型事業所の開業には500万円~1000万円前後が必要です。

自己資金が足りない場合は、日本政策金融公庫の融資制度を利用して資金調達する方法があります。

パソコン関連の機材や請求ソフトといった必要な初期費用にはIT導入補助金などの助成金・補助金も活用して費用を抑えるのがいいでしょう。

また、就労継続支援A型を開業したばかりだと、売上の入金が数か月後先になりしばらくは資金繰りが苦しいことが想定されるため、ファクタリングサービスをうまく活用することがお勧めです。

余裕のある資金と運営計画でスムーズな開業と事業運営を目指しましょう。

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