厚生労働省「指定就労継続支援事業所のガイドライン」解説|今後就労支援事業所が取るべき対策とは

令和7年10月20日(月)厚生労働省の社会保障審議会障害者部会(第151回)が実施されました。その中で「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」が示され、業界で注目されています。

本記事では、このガイドラインについての解説、そしてガイドラインを受けて就労支援事業者が今後どのように対応していくべきなのかも解説しています。

ガイドラインの解説だけでなく、今後の事業所運営についても参考にしてください。

目次

厚生労働省が「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を公開

厚生労働省が公開した「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」は、下記URLから誰でも閲覧できます。

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001581251.pdf

資料の量は多いのですべてを読み込むのは大変なので、その中から特に今後の事業者運営に関わってくる箇所を抜粋して解説していきます。

利用者の募集方法(募集条件)として不適切と考えられるもの

c. 利用者の募集方法(募集条件)について

利用者の募集方法・(募集条件)について詳細を確認すること。特に、下記のような方法は不適切であり、指定基準違反である可能性を踏まえて確認すること。

<不適切と考えられるもの>

・実質的に金品や物品の提供を謳った募集になっているもの

(例)商品券や生産活動に関係ない電子機器等を利用者に配付する

・交通費や昼食費の一律的な提供を謳った募集になっているもの

(例)利用者獲得のために、交通費や昼食費を無料と謳い、本人の意思に反して利用者誘因行為を行っているもの

・能力給を導入した工賃規程を作成するなど、非雇用型利用者において、技能給(能力給)が導入されている。

※就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について(平成 18 年10 月 2 日付障障発 1002003 号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知)では、A型利用者(雇用無)及びB型利用者に対し、技能に応じて工賃の差別を設けてはならないことを規定している。

・在宅支援の要件を満たさない形態での運営を想定したもの

(例)提供される生産活動の内容や緊急時対応の具体的な実施方法等、在宅支支援の要件を満たした運営が実施できる計画になっているか。

(例)緊急時の対応について、速やかに事業所職員が駆け付けることができ、事業所の責任のもと対応できる計画となっているか。

・実際には従事できる時間や機会が極端に少ないにも関わらず、当該事業所を利用すれば、その生産活動に常時取り組めると利用者等に誤解を与えるもの

・高賃金、高工賃を支払うことができる生産活動を提供していないにもかかわらず、高賃金・高工賃の支払いを確約すると誤解を与えるもの

(例)「1日来たら○○円」と謳い、生産活動収支上赤字であるにも関わらず、賃金・工賃を提供する

  • 金品や物品の提供を謳っての募集
  • 交通費や昼食費の提供を謳った募集
  • 「1日来たら〇〇」円と謳う

など募集方法についてかなり具体的な指摘が入っています。実際に生産活動がされていない施設に対して、募集方法について注意が入る可能性が高そうです。

生産活動の適切性

d. 生産活動の適切性

指定事業所は、生産活動その他の活動の機会を提供する必要があるが、生産活動と称して、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動等、公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動や、所定の場所に居ればよいというような活動等、不適切な事例が散見されているため、事業計画書等の審査の際には、適切な生産活動の機会の提供になっているか、以下の観点及び2(2)イ(イ)の根拠情報等を踏まえて詳細を確認すること。

・具体的な生産活動の場面があるのか

・当該生産活動により一般就労に必要な能力向上が見込まれるのか

・それにより安定した生産活動収入を得ることができるのか

・地域の中に当該生産活動が活かされる労働市場や求人があるのか

・生産活動の収益が適当か(収入が支出と合っているか)

・業務委託費が妥当か(取引価格や単価が過大又は過小に設定されていないか)

  • eスポーツ
  • 植物の水やりを1日数回行うだけの活動
  • 卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動

など具体的な指摘が入っています。例えばeスポーツの仕事ができると謳って募集しているにも関わらず、実際はただゲームをやっているだけという施設には、注意が入る可能性が高くなっています。またここには記載されていませんが、動画編集などの仕事もただ自分の好きな動画を作っているだけだと、指摘される可能性があります。

収支予算書の確認事項

(イ)収支予算書

福祉事業と就労支援事業それぞれの収支予算書を確認すること。特に、生産活動に係る計画については下記の書類等で確認することが望ましい。

<確認事項>

・利用者の賃金・工賃を支払うことができる生産活動収入が見込まれるか

・継続的な事業見込みと実効性があるものなのか

・事業計画書等において継続的な事業見込みと実効性があるものなのか

・生産活動の具体的な内容及び収入見込みとの整合性

○生産活動による収入確保に係る確認

・生産活動による収入確保の具体的な見通し(取引予定、売上見通等)

・先行事業所との差別化に向けた計画(生産活動による収益に影響を与える要素)

・生産活動の継続性の有無

・想定される収入額(継続的に収益を得られると言える根拠の確認)

・利用者が当該作業に従事できる時間

・複数の生産活動、取引先を確保しているか

○生産活動の内容

・就労に必要な知識及び能力の向上に資する活動といえるか。

・当該生産活動に障害者が従事することで一般就労に必要な知識・能力・(職場におけるコミュニケーションスキル等も含む)の向上が図られるものなのか

・生産活動以外の利用者の知識や能力向上のための訓練カリキュラムを予定している場合、支援提供時間における当該活動時間の割合

○生産活動に係る取引先情報

・企業等の名称、所在地、代表者、どのような契約をする予定か

・単一取引先だけでなく、複数の取引先を確保しているか

(例1)「想定される収入額やその根拠、取引先の情報、利用者が当該作業に従事できる時間等を教えてください。」等

(例2)申請事業所が想定している工賃規定案を確認し、時給制を取る予定の場合、収入見込みとの差がないか、時給額まで到達しない場合には具体的にどう対応するのか(自立支援給付費による補填はできないことを周知する)について確認すること。

収支予算書の書き方も、具体的に記載されています。

  • 生産活動が本当におなわれているか
  • 生産活動で収入確保ができるのか
  • 生産活動が継続的に実施されているのか
  • 就労に必要な知識及び能力の向上に資する活動になっているか

など生産活動に関する項目について、厳しくチェックがおこなわれそうです。

生産活動をしていない事業所に対して厳しい方針

このガイドラインをまとめると、総じて生産活動をしていない事業所に対して厳しい方針となっています。「実際は生産活動をせず、国から報酬をもらっているだけ」の事業所を減らしていこうという方針を打ち出したとも言えます。

しかしこの方向性は以前から続いており、令和6年就労継続支援B型の報酬改定でも、生産活動をしていない事業所の報酬が減らされる改定になっていました。そのため今後も個の方針が続いていくと考えられます。

ガイドラインが就労支援事業所に今後どのような影響を及ぼすか

「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」が示されたことで、生産活動をしていない事業所に対して厳しくなる方針が示されました。今後就労支援事業所には、どのような影響があるのでしょうか。

法律改正や報酬改定に方針を反映される

今回示されたのはガイドラインですが、この方針が覆ることはまずありません。近いうち法律改正や報酬改定などに、今回のガイドラインの内容が反映されるでしょう。

  • 応募文面や広告についてチェックが厳しくなる
  • 収支予算書のチェックが厳しくなる
  • 事業所に監査が入る
  • 生産活動をしていない事業所の報酬が減らされる

このような対応がされる可能性は高いです。

生産活動をしていない事業所は方針転換を求められる

ガイドラインが法律改正や報酬改定に反映される可能性が高い以上、今後もこの方針は続いていくでしょう。そのため生産活動をしていない事業所は、今後立ち行かなくなる可能性が高いです。そのため生産活動をしていない事業者は、方針を転換することを求められます。

就労支援事業所は本来、企業から仕事を受け、その仕事を利用者にしてもらい、企業から報酬を受け取ります。利用者はその仕事を手伝い、報酬をもらうというのが本来のあり方です。就労支援事業所は、今後このような方針で運営していくことが求められていきます。

就労支援事業所は今後どのような対策をすればいいのか

厚生労働省のガイドライン、今後の方針を踏まえて、就労支援事業所は今後どのような対策をすればいいのでしょうか。多数の就労支援事業所と関わりのあるケアファクタリングが解説していきます。

ビジネスを成立させていく必要がある

厚生労働省のガイドライン・方針を考えると、生産活動をしていない事業所の生き残りはますます厳しくなっていくことが予想されます。生産活動をしていない事業所は総じて利用者への報酬も低く、報酬が低ければ利用者も集まりません。

そのため就労支援事業所は生産活動を実施する、つまりビジネスを成立させる必要があります。

  • 企業から仕事を受注する
  • 受注した仕事を利用者にしてもらう
  • 利用者に高めの報酬を支払う
  • 事業所は国から報酬をもらう

このサイクルを成立させないと、就労支援事業所が生き残っていくことは難しいでしょう。そのためには利用者の能力を踏まえて、どんな仕事ならできるかを考え実践していくことが大切です。仕事の受注は事業所がする必要がありますので、仕事の受注・実践・納品までの仕組みを作る必要があります。

事業所の方針を切り替えるための資金繰りもポイント

とはいえ就労支援事業所がビジネスを成立させるのは、とても難易度が高いです。特にこれまで生産活動が少なかった事業所が方針を切り替えるのは、時間も労力もかかります。そして切り替えるまでの間の運転資金も必要になるでしょう。

この資金繰りをいかにうまくするかが、今後就労支援事業所が生き残るためには必要です。

就労継続得支援事業所の資金繰りはケアファクタリングへ

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